現役施設看護師きなこが「特養に転職して目から鱗だった体験」を教えます。
看取りの場面で特養だからこそできたケア
私が働いた特養での目から鱗だった体験をお伝えします。
特養はいわゆる「終の棲家」なので、看取りケアを行うこともあります。
医療的処置が必要な場合には病院へ転院が必要ですが、
経口摂取量は徐々に落ちて老衰のような形であれば
特養で看取りをしていました。
もちろんご家族と事前に希望の確認はしていきます。
経口摂取が難しくなった時に
胃ろうを希望するか、点滴を希望するかなど。
自然に施設で見送りたいと希望された場合には
身体状態から、そろそろ近づいてきたとなったら
介護や看護間でその方の看取りケアについてカンファレンスします。
その人の好きなこと、好きだった食べ物、音楽、家族の思いなど踏まえながらケアを考えます。
死期が近づいてくると病院では絶飲食の指示になりますよね。ほぼ。誤嚥性肺炎や窒息等のリスクをとって。
でも特養では医師がいるわけではないし、嘱託医も診察しても絶飲食の指示なんて出しません。
老衰の人に対して点滴はしません。
脆弱な血管にわざわざ痛い思いをして点滴をしても浮腫となり、吸収されない点滴の水分が心臓負荷につながるからです。
嘱託医は胃ろう造設はむやみに勧めません。
利用者にとって幸せな選択はなにか。
元気だった頃、意思表示が出来たころの利用者だったら
何を望んでいるかを家族とともに考えてケアをします。
ビールが好きだった利用者さんにはビールを凍らせたものを砕いて口に含ませてあげたり、
甘いものが好きな利用者さんには甘酒をガーゼにしみこませて口を潤してあげたりしていました。
ご家族はそれを見て
「この人はこれがすきだったからね。こんなことが出来てうれしいです。」
と涙を流される場面も多かったです。
私が働いた特養では看取りの方は静養室という医務室の隣の個室に入ります。
日中はその方の好きな音楽をずっとかけてあげて(演歌や歌謡曲などが多いです)。
写真などの思い出の品を飾ってあげていました。
洗面台や畳のスペースもあり、ご家族はそこで布団を敷いて一緒に寝たり、休んだりできます。
そういうケアをじっくりご家族と一緒に考えてできるのは
特養でのいいところだなと思いました。
病院でももちろん個別性を重視しながら終末期のケアをしていましたが、
制限がかかることもある(絶飲食の件など)
また忙しい業務の中でじっくりと関わるのは難しかったので、
こんな関り方をできるのは目から鱗な体験でした。
亡くなった後はご家族とエンゼルケアをしてお顔を他の利用者さんに見てもらいます。
他の利用者さんいが集まって玄関で職員と共にお見送りします。
利用者さんたちは手を合わせて見送ってくれます。
病院だとお見送りするときも他の患者さんの目に触れないように
廊下を通る時には他の病室のドアをしめたりしながら配慮していましたが、
特養だとみんなで
「お疲れ様。ありがとう。」
という温かい雰囲気で見送ります。
その点も特養ならではだと思います。
私が働いていた特養では
「平穏死」のすすめの著者である石飛医師の考え方に共感を得て、それを実践しています。
施設長や先輩は講演会等にも参加しながら勉強してこの考えに行きついたと話していました。
私はお恥ずかしながら、施設に転職するまで石飛医師の存在も平穏死の考え方も知りませんでした。
まだ読んだことがない方は是非読んでみてくださいね。
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まとめ
特養での看取りでは
ご家族の意向や希望に合わせて
最期まで経口摂取を楽しんだり、好きな音楽をかけたり
その人らしく最期を迎えるお手伝いができる。
退所の際には
みんなで手を合わせて
「お疲れ様」と見送る。
病院では体験しなかったケアをすることができて施設看護師のやりがいを感じています。
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